こんにちは。ぶらす室長 (@goodembryobaby)です。
ご質問の中で最も多いのが「この胚盤胞グレードなら、どのくらいの妊娠率が期待できますか?」というご質問です。インターネットやクリニックのホームページなどを調べてみても、胚盤胞のステージとグレード別の妊娠や出産の期待度についてはあまり記載されていません。
そこで今回は、胚盤胞の形態評価方法をおさらいし、胚盤胞のステージとグレードからそれぞれの期待できる生児獲得率についての論文をご紹介したいと思います。
胚盤胞の評価法:Gardner分類について
まず、胚盤胞のグレードのスコアリングの仕方(評価方法)についておさらいしましょう。
胚盤胞の評価方法は、Gardnerという研究者が2000年ごろに提唱した胚盤胞の評価法が最も普及しており、日本国内でも最も利用されています。
まず胚盤胞の大きさや孵化の状況によってステージ1〜6に分類されます。
ステージはBLやGと表現し、BL1〜6、G1〜6と呼ぶ場合もあります。
さらに、胚盤胞は2種類の細胞に分化しており、それぞれ将来何になるか決まります。
TE(栄養膜細胞): 胎盤に発育する細胞
この2種類それぞれの細胞の数と緊密さからA,B,Cの3種類に分類し、評価をします。
例えば、
ステージ3
ICMグレード ”A”
TEグレード “B”
の胚盤胞であれば、 “3AB” となります。
胚盤胞の評価の例
では、実際の写真を観て胚盤胞の評価をしていきましょう。下の写真それぞれの胚盤胞のグレードを正確に評価できますか?※下図参照
引用:Association between blastocyst morphology and outcome of single-blastocyst transfer
では、答え合わせです。
(a) 3AA (b) 3AB (c) 3BA
(d) 4AA (e) 4AB (f) 4BA
(g) 4CC (h) 5AA (i) 5CA
以上がそれぞれの胚盤胞のグレードでした。
どうでしたか?合っていましたか?
ここで覚えておいて頂きたいのが、Gardner分類は形態評価(見た目の評価)ですので、評価する人によって違いが出てしまう可能性がある事です。上の写真の胚盤胞グレードも「私の評価と違うな」と思う胚盤胞がいくつかありました。
形態評価は極めて有効な胚のセレクション法ですが、バラつきがあることが大きなデメリットとなります。
胚盤胞評価別の臨床成績
今回の論文の前提条件としては
これらを踏まえた上で結果を見ていきましょう。
胚盤胞ステージ別臨床成績
ステージ | 移植胚数 (N) | 臨床妊娠率 | 生児獲得率 | 流産率 |
---|---|---|---|---|
BL-5 | 152 | 50% | 46% | 23% |
BL-4 | 255 | 45% | 40% | 24% |
BL-3 | 106 | 20% | 17% | 30% |
BL-2 | 52 | 12% | 12% | 54% |
BL-1 | 53 | 6% | 6% | 40% |
p 値 | ー | <0.01 | <0.01 | 有意差なし |
ステージが高い(大きい)ほど臨床成績が高いことがわかります。
ICM・TEグレード別臨床成績
移植胚盤胞数 | 臨床妊娠率 | 生児獲得率 | 流産率 | |
---|---|---|---|---|
ICM グレード | ||||
A | 270 | 48% | 44% | 18% |
B | 184 | 36% | 33% | 32% |
C | 59 | 27% | 20% | 32% |
P 値 | ー | <0.01 | <0.01 | 0.03 |
TE グレード | ||||
A | 235 | 48% | 45% | 21% |
B | 217 | 39% | 34% | 27% |
C | 61 | 25% | 20% | 30% |
P 値 | ー | <0.01 | <0.01 | 有意差なし |
ICMグレードが良いほど、妊娠率、生児獲得率が高く、流産率が低い
TEグレードが良いほど、妊娠率、生児獲得率が高いことがわかります。
一方で、胚盤胞のステージをBL-4 or 5に限定して比較した時は、ICM・TEグレードともにグレード間で有意差がないと報告されています。
引用:Association between blastocyst morphology and outcome of single-blastocyst transfer tableを一部改変
胚盤胞のステージとグレードから予測される生児獲得期待値
では、胚盤胞のステージ・ICMグレード・TEグレードの組み合わせによって、それぞれどのくらいの生児獲得が期待できるか見ていきましょう。
例えば、4 or 5AAの生児獲得期待率は47%、3BBは18%、3BCは15%といったようにそれぞれの胚盤胞の期待値がわかります。全く同じグレードであってもステージが進んでいる方が生児獲得の期待値が高いことがわかります。
ただ、この論文の対象症例の年齢層は29-33歳、平均年齢は31歳と非常に若齢です。
そのため、一般的な臨床成績よりも全体として高いと考えて参考程度にしておきましょう。
まとめ
胚盤胞のステージと形態評価の成績を細かく比較したデータがなかったので論文をご紹介しました。繰り返しになりますが、評価の仕方や、何を優先して移植の順番を決めているかはクリニックによって異なります。ステージよりもグレードを優先するクリニックも少なくはないと思います。その違いはあって然るべきなのでクリニックに問い合わせましょう。
最後までご覧頂きありがとうございました。
ご参考になれば嬉しいです。
今回の引用はこちら↓↓
Association between blastocyst morphology and outcome of single-blastocyst transfer
Van den Abbeel E, et al. Reprod Biomed Online. 2013. PMID: 23953585
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