こんにちは。ぶらす室長 (@goodembryobaby)です。
不妊治療中は
「少しでも妊娠する可能性を上げたい」
「何か体質が改善することがしたい」
と考える患者様が多いのではないでしょうか?
最も手軽にできる方法として「サプリメントを飲む」ことが挙げられます。
しかしながら、世の中には効果が不明なサプリメントが多数販売されており
「何を飲めば良いかわからない」
「本当に効くのかよくわからない」
という声をよく耳にします。
そこで、今回はビタミンDをピックアップして
ビタミンD摂取が本当に不妊治療に効果があるのか?について論文をレビューしていきたいと思います。
ビタミンDとは
妊娠との関連
不妊との関係性のお話の前に、妊娠中のビタミンD不足に関するエビデンスが多いのでご紹介します。
そのため、アメリカやヨーロッパなどでは妊娠中の摂取が推奨されています。
ビタミンDの至適血中濃度
血中のビタミンDレベルは、25-hydroxy vitamin D (25OHD)濃度で簡単に測定できます。
また、血中濃度が100ng/mLを超える場合は、毒性があるため過剰となります。
最近の知見によると、妊娠適齢期の20-52%の女性は
ビタミンDが欠乏していることが報告されています。
ビタミンD不足と胚移植成績の関連
本題に入ります。
まず、ビタミンDが不足すると体外受精の胚移植成績に影響するのかが重要です。
もし、影響しないとしたら、サプリメントで摂取する必要はありません。
血中や卵胞液中のビタミンD濃度と体外受精成績を比較した論文は(本当に)多数あり、肯定否定と様々ですが、今回は比較的エビデンスレベルの高い血中ビタミンD濃度と胚移植成績の関係を報告した11本の論文のメタ解析を引用します。
すなわち、血中ビタミンDの欠乏/不足は胚移植後の成績を低下させることが示唆されています。
一方で、流産の可能性には差がない (odds比:1.12)ことが示唆されています。
採卵、培養成績との関連
卵巣機能、体外受精や培養成績との関係ですが
血中および卵胞液中のビタミンD濃度は、卵巣のホルモン感受性、発育卵胞数、採卵数、受精率、胚の質に関与しないことが報告されています。
すなわち、血中ビタミンD濃度は卵巣機能、卵子や胚の質に関与しないことが考えられます。
ビタミンDは子宮内膜機能に関与?
これらの結果から
ビタミンD濃度は、卵巣機能や卵子の質よりも着床期における子宮内膜の機能に関与していると考えられています。
メカニズムとしてはビタミンDの免疫調整機能が関わっている可能性が報告されています。
↓難しいので下記はご参考までに。
PCOSとの関連性
PCOSとビタミンDは密接に関連しており、PCOS患者はビタミンD欠乏/不足となりやすいことが報告されています。
→ PCOS患者へのビタミンDの摂取はメリットが大きそうですね。
サプリメント摂取により体外受精成績は改善するのか?
ビタミンDサプリメントを摂取して、体外受精成績が改善したかを検討した報告は非常に少ないです。ここが一番気になるところなので、最近の論文を1報レビューします。
[方法]
血中ビタミンD濃度が30ng/ml未満の患者を対象に
ビタミンDを週に50,000IU、6週間摂取した症例(42症例)とプラセボ(偽薬)を摂取した患者(43症例)とのICSI→胚移植後の成績を比較した。
[結果]
ビタミンD摂取により、血中ビタミンD濃度が有意に上昇した。
コントロール群と比較してビタミンD摂取群において、良好な子宮内膜の割合が有意に上昇し、臨床妊娠率が有意に上昇した。一方で、採卵数、受精率、良好胚率に有意な差はなかった。
[結論]
採卵実施6週間前からのビタミンD摂取により
子宮内膜の質が改善し、臨床妊娠率が向上した。
Effect of Vitamin D Supplementation on Intracytoplasmic Sperm Injection Outcomes: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial.
Abedi S, et al. Int J Fertil Steril. 2019.
ぶらす室長の考察
「不妊と関連がない」という論文も少なくはない
妊娠中の摂取が推奨されていますが、妊娠中の摂取すら「効果がない」とする論文がいくつかあります。
不妊との関連についてはさらに否定論文が多く
まさに「賛否が分かれる」状態。
ただ、今のところはビタミンD欠乏は不妊原因となるという論文が優勢です。
ビタミンDサプリ摂取によって体外受精成績が向上するかは、エビデンスが非常に少ない
サプリメント摂取により、血中のビタミンD濃度が上昇するという報告はいくつかあります。
一方で、ビタミンDの経口摂取により胚移植の成績が向上したという報告は、上記に紹介した論文のみ。
この論文、study designは悪くないのだけれど、とにかくjournalが弱い!(イランのjournalでIFが1.5くらい)
本当はもっとエビデンスレベルの高いjournalの論文をご紹介したかったのですが、探しても見つけられませんでした。
(見つけたら誰か教えてください)
そのため、本ブログでは
ビタミンDサプリメント摂取が妊娠成績を改善するかはまだわからない
と結論づけたいと思います。更なる報告を期待して待ちたいと思います。
1日の推奨摂取量の目安
IOM(Institute of Medicine)とES (Endocrine Society)のガイドラインでは
1日あたり600 IU(15 µg)の摂取を推奨しています。
また、血中ビタミンDが欠乏/不足の方は
週に50,000 IU (1,250 µg)の摂取 (1日あたり1,500-2,000 IU)を8週間維持することを推奨しています。
まとめ
ビタミンDの良いところは、欠乏者や不足者が血液検査で簡単にわかるところです。季節によって変動があることが気になりますが、血中濃度が十分量ある方は摂取する必要はないと思います。
サプリメントは薬ではありません。
効果がある人とない人がいるのは、個人個人の食事や生活週間、持病などが異なるためです。
過度に期待したり、飲むことを義務のように考えたりするのはやめましょう。
あと、よくわからない高価なサプリメントを買う必要はありません。
ドラッグストアなどで売っているビタミンDサプリで充分だと思います。
最後までご覧頂きありがとうございました。
少しでもご参考になれば幸いです。
引用↓↓
Vitamin D supplementation for women during pregnancy.
Palacios C, Kostiuk LK, Peña-Rosas JP.
Cochrane Database Syst Rev. 2019 Jul 26;7(7)
Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a systematic review and meta-analysis.
Chu J, Gallos I, Tobias A, Tan B, Eapen A, Coomarasamy A.
Hum Reprod. 2018 Jan 1;33(1):65-80.
Roles of Vitamin D in Reproductive Systems and Assisted Reproductive Technology.
Chen Y, Zhi X.
Endocrinology. 2020 Apr 1;161(4)
Vitamin D and assisted reproduction: should vitamin D be routinely screened and repleted prior to ART? A systematic review.
Pacis MM, Fortin CN, Zarek SM, Mumford SL, Segars JH.
J Assist Reprod Genet. 2015 Mar;32(3):323-35.
Effect of Vitamin D Supplementation on Intracytoplasmic Sperm Injection Outcomes: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial.
Abedi S, et al. Int J Fertil Steril. 2019.
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