こんにちは。ぶらす室長 (@goodembryobaby)です。
胚盤胞の形態評価(グレード)は妊娠率や生児獲得率に大きく影響することはご存知かと思います。
また、年齢が上昇すると妊娠率や生児獲得率が低下してしまうこともよく知られています。
一方で、「同じ4AAであれば30歳でも40歳でも期待できる割合は同じなのでしょうか?」
答えはNOです。
そこで、今回は年齢別に胚盤胞グレードの期待できる生児獲得率についての論文をご紹介したいと思います。
胚盤胞のグレードやステージについてよくわからないという方は、先に以下の記事をご参照ください。
https://ebr-reference.com/blastocysts-morp…nd-stage-outcome/
対象症例とグループ分け
【対象症例】
・ 4952カップルの21,301個の正常受精卵
14,157個の胚盤胞を対象
・ 胚盤胞はDay 5またはDay 6に発育したもの
・ ドナー卵子、TESE精子由来症例は除外
・ 平均年齢は33.1±4.5歳
【年齢のグループ分け】
・ 23-29歳、30-33歳、34-36歳、37-43歳の4グループに分類
・ 37-43歳のグループを高齢と定義
・ 症例数がだいたい同じ数になるように調整
【胚盤胞グレードのグループ分け】
BL1、BL2はearly胚として形態評価せず
BL3からBL6のみグレーディング
形態評価別に以下の3グループに分類
結果:年齢別の胚盤胞形成率
最初に、年齢別の受精卵あたりの胚盤胞形成率を見てみましょう。
40歳頃から緩やかに低下していますが、およそ10%程度でそこまで大きな低下ではありません。
ちなみに、20-22歳が低いのは症例数が少ない(35症例ほど)ためであると説明されています。
続いて、年齢グループ別のステージごとの胚盤胞率を見てみます。
37-43歳グループにおけるB3-B6(BL3-6)への到達率が他の3群と比較して有意に低いです。
その代わりに有意差はありませんが、B1-B2(BL1-2)の割合が増加しています。
すなわち、37歳以上で拡張期胚盤胞への発生率が低下することがわかります。
結果:年齢グループ別の臨床成績
続いて、年齢グループ別の臨床成績を比較した表を見てみましょう。
23-29歳 | 30-33歳 | 34-36歳 | 37-43歳 | P値 | |
---|---|---|---|---|---|
胚盤胞 移植率 | 86% a,b | 82% c,d | 83% a,c,e | 83% b,d,e | <0.05 |
着床率 | 47% a | 48% a | 39% | 30% | <0.05 |
妊娠率 (/採卵) | 40% a | 40% a | 34% | 30% | <0.05 |
流産率 (/妊娠) | 14% a,b | 14% a,c | 14% b,c | 23% | <0.05 |
生児獲得率 (/採卵) | 33.5% a | 33% a | 29% | 22% | <0.05 |
異符号間に有意差ありです。
結果をまとめると
すなわち、34歳以上で全体としての臨床成績が低下することがわかります。
結果:年齢グループ、形態評価別の生児獲得率
では、本題です。
形態評価3群と年齢グループ別にそれぞれの生児獲得率をグラフ化しています。
各グラフの数字は生児獲得率です。
23-29歳:青
30-33歳:赤
34-36歳:緑
37-43歳:紫
“Average morphology”を見て頂くとわかるとおり、同レベルのグレードでも年齢が上昇すると生児獲得率が低下しています。
また、“Good morphology” では37-43歳グループの生児獲得率が急低下しています。
さらに“Poor morphology”の37-43歳グループでは出産例がありません。
このように年齢によって胚盤胞のグレードから期待できる臨床成績は異なることがわかります。
まとめと考察
母体年齢は最も臨床成績に影響する因子です。
形態評価が良くても年齢によって成績に差が生まれることは揺るぎない真実かと思います。
何度も言っていますが「形態評価は評価者や施設間でバラつきが大きい」ため、今回の成績も一例としてご参考にしてください。
また、本文献で“Average morphology”とされているグレード(AC/CA/BC/CB)は、一般的には不良胚と分類しているクリニックが多いです。CCに至っては凍結や移植を行わないクリニックもあるためご注意ください。
最後までご覧頂きありがとうございました。ご参考になれば嬉しいです。
今回の引用はこちら↓↓
Extended embryo culture is effective for patients of an advanced maternal age.
Sainte-Rose R, Petit C, Dijols L, Frapsauce C, Guerif F.
Sci Rep. 2021 Jun 29;11(1):13499.
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