【不妊治療】移植胚へのAssisted hatchingは効果があるのか?

論文レビュー
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こんにちは。ぶらす室長 (@goodembryobaby)です。

今回は、Assisted hatchingの有効性についての論文をレビューしていきたいと思います。

現在の日本の不妊治療では、「全ての移植胚に施行する」というクリニックも少なくはないと思います。本当に有効なのでしょうか?

[結論]AHは効果があるのか?

移植胚へのAHの施行は、

・ 妊娠率をわずかに上昇させる可能性がある

・ 流産率や生児獲得率には影響しない

・ 多胎妊娠率をわずかに上昇させる可能性がある

・ エビデンスレベルは低く、明確な有効性があるとは言えない  

 

Assisted hatching (AH)とは?

ヒトの卵子、胚には透明帯という「卵の殻」のような構造があります。

拡張期胚盤胞へ発育し、着床する際には透明帯を破って中の胚が子宮と着床します。
※下図の右側参照

これを孵化(Hatching)と呼び、体外操作由来胚では、孵化を補助する技術としてAssisted hatching (AH)が広く行われています。

レーザーによるAHと孵化した胚盤胞

画像引用元: Reprod Med Biol. 2021 Jan 27;20(2):182-189. doi: 10.1002/rmb2.12366. eCollection 2021 Apr.

 

AHの意義

 

・ 透明帯は、体外受精、体外培養および凍結操作によって硬化することが報告されている

・ そのため、体外操作由来胚は孵化が難しい可能性が懸念される

・ AHは、着床Windowのずれと関連する可能性が報告されている

・ 人工的な孵化により、胚と子宮内膜間のメッセージや成長因子のやりとりが促進されると考えられている

 

※「懸念されている」「考えられている」はエビデンスがないものもありますのでご注意ください

AHの方法

主なAHの方法は以下の3点

・ レーザー法

顕微鏡に搭載された、レーザー照射装置によって透明帯を溶かす方法。
現在、最も多くのクリニックで採用されており、簡便で安全な方法とされている。

・ 薬剤処理法

胚に透明帯を溶かす薬剤をふりかけて行う方法。
薬剤が胚にダメージを与える可能性が否定できないため、現在はあまり行われていない。

・ 切開法

マイクロマニュピレーターとガラス針によって、透明帯に切れ目を入れる方法。
ある程度高度な技術が必要であるが、安価でかつ慣れると作業時間が短い。

AHを行うのに適した胚のステージはいつか?

分割期胚では、透明帯に穴を開けるのではなく、菲薄化(薄くする)を行います。

一方で、胚盤胞期胚では、完全に穴を開ける(開口)ように行います。

論文では、分割期胚(2-3日目)や胚盤胞期胚(5-6日目)どちらの報告もあり、メタ解析によってどちらもわずかな妊娠率の向上が観察されています。

AHが有効な症例は?

症例をいくつかのグループにカテゴライズしたメタ解析論文によると

・ 移植不成功歴がある新鮮胚移植のグループ
・ 凍結融解胚移植のグループ

 

において妊娠率の有意な上昇が確認されています。

AHAのデメリットや欠点は?

 

・ コストが発生する(相場は1万円〜3万円)
・ 多胎妊娠率がわずかに上昇する可能性がある
・ 流産率の低下や生児獲得率の上昇に寄与しない

 

特に多胎妊娠率は、母子ともに様々なリスクにつながりますので、注意が必要です。

AHは結局やるべきか?

 

・ 妊娠率を少しでも上げたい方はやるべき
・ コスト面や多胎妊娠が気になる方はやらなくても大きな問題はない

 

ぶらす室長
ぶらす室長

たくさんの論文が出ているにもかかわらず、明確な効果を断言できない技術です。

個人的には、数値ではわからないレベルで

孵化不全による妊娠失敗が起きている可能性も否定できないので、やっておいても損はないかと考ています。

 

ぶらす室長
ぶらす室長

最後までご覧頂きありがとうございました。

少しでも参考になれば幸いです。

 

引用論文↓↓
・ Hum Reprod Update. 2011 Jul-Aug;17(4):438-53. doi: 10.1093/humupd/dmr012. Epub 2011 Apr 7.
・  Cochrane Database Syst Rev. 2021 Mar 17;3:CD001894. doi:  10.1002/14651858.CD001894.pub6.

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