こんにちは。ぶらす室長 (@goodembryobaby)です。
今回も、よくあるご質問のひとつ
2段階胚移植について、2個同時移植との比較などの論文をレビューをしていきたいと思います。
2段階胚移植の概要
2段階胚移植(2step ET)とは、同じ採卵周期(移植周期)に初期胚を2日または3日目に移植し、さらに胚盤胞を5日目または6日目に移植する方法です。※下図参照
以前の記事「初期胚移植と胚盤胞移植はどっちが良いのか?」で初期胚と胚盤胞移植のメリット・デメリットを下記のようにご紹介しました。
・ 胚盤胞移植は、移植キャンセル率が高い
まだ読んでいない方はこちらからどうぞ↓↓
https://ebr-reference.com/cleavage-embryo-versus-blastocyst-tansfer
2段階胚移植では、初期胚と胚盤胞移植の良いところ取りができることが利点です。
どういうことかというと、妊娠率の高い胚盤胞を移植したくても、受精卵が胚盤胞まで発育できるかは5日目になるまでわかりません。そこで、とりあえず初期胚を1個移植し、その後培養継続した胚が胚盤胞に発育すれば、さらに追加で胚盤胞を移植するという戦略です。これにより、移植キャンセルが回避できます。
2段階胚移植実施の注意点としては下記のことが挙げられます。
・ 多胎妊娠のリスクが増加する可能性
初期胚2個同時移植との比較
では、2段階胚移植の妊娠成績は2個同時移植と比べてどうなのでしょうか?
まず、2日目初期胚2個同時移植との比較論文をレビューします。※日本のクリニックの論文です
この報告では、Day2に良好胚を2個同時移植した群(Day-2 ET)と、Day2に初期胚を1個移植し、Day5に胚盤胞または桑実胚を1個移植した群(Two-step ET)に分類して妊娠率や着床率、多胎妊娠率などを比較しました。
面白いところは、対象症例を「受精卵が2個だった症例」のみに限定しており、Two-step ET群には「Day 5で移植可能胚がなく、2日目しか移植していない症例」も含んでいる点です。そのため、Two-step ETの戦略的有効性が見えてきます。
【結果】
移植胚数(No. of embryo transferred)は、Day-2 ET 群が有意に多く、Two-step ET群では2回目の移植ができなかった症例があるということがわかります。
一方で、周期あたりの臨床妊娠率は、Two-step ET群が有意に高く、移植胚あたりの着床率もTwo-step ET群が有意に高い結果となりました。
※多胎妊娠率がどちらもかなり低率なのが気になりますが。。。
胚盤胞2個同時移植との比較
続いて、最近報告された初期胚と胚盤胞2個同時移植との比較論文をレビューします。ランダム化比較試験ですが、エジプトの研究チームの論文です。
この報告では、3日目の初期胚2個同時移植群(day-3)、5日目の胚盤胞2個同時移植群(day-5)、3日目の初期胚と5日目の胚盤胞を1個ずつ移植した2段階胚移植群(sequential)に分類し、臨床成績を比較しました。
対象症例は、これまでに胚移植を2回以上実施して妊娠に至らなかった「反復不成功症例」かつ、受精卵が「5個以上得られた症例」のみに限定しています。
【結果】
2段階胚移植群(sequential)の臨床妊娠率、生児獲得率、着床率が、その他の2個同時移植よりも有意に高い結果となりました。
※こちらの論文では、全ての群において多胎妊娠がかなり多いのが気になりますが。。。
[解説] なぜ2段階胚移植の臨床成績は高いのか?
2段階胚移植は、2個同時移植と比べて臨床成績が高いという論文を2報ご紹介しましたが、なぜ2段階胚移植の方が臨床成績が高いのでしょうか?
それぞれの論文が、そのメカニズムについていくつかの仮説を立てて考察しています。
仮説1:子宮内に胚があることが重要
卵管内や子宮内に胚が存在することにより、子宮内膜が受容期(着床期)へと移行しやすくなるという考え方。そのため、初期胚が子宮内にあることで、胚盤胞移植の着床率を高めているのではないかという仮説。
仮説2:最初の移植が内膜スクラッチの代わりになる
1回目の胚移植のカテーテルなどの挿入が子宮内膜を刺激することにより、子宮内膜の受容期への移行を促しているのではないかという考え方。つまり、内膜スクラッチと同じ理論で、胚盤胞移植の着床率を高めているのではないかという仮説。
仮説3:2回の移植が着床の窓を刺激している
子宮内膜のステロイドホルモン反応性のタイミングは患者によって異なる可能性があるため、異なる2回のタイミングで胚を移植することで、着床の窓を刺激しているのではないかという仮説。
どの仮説も、もっともらしいのですが、仮説の域を出なそうです。また、世界的にはあまりメジャーな移植方法ではないので、論文が少なく、メタ解析やシステマティックレビューがないのでエビデンスレベルは低いですね。
まとめ
2段階胚移植は、反復移植不成功の患者様への「選択肢のひとつ」としてアリだと思います。ちなみに、凍結融解胚でも実施可能ですが、凍結融解胚移植費用が2回分係る可能性もありますのでご注意ください。
最後までご覧頂きありがとうございました。ご参考になれば幸いです。
引用はこちら↓↓
Effectiveness of two-step (consecutive) embryo transfer in patients who have two embryos on day 2: comparison with cleavage-stage embryo transfer.
Goto S, et al. Fertil Steril. 2005. PMID: 15749504 Clinical Trial.
Comparing sequential vs day 3 vs day 5 embryo transfers in cases with recurrent implantation failure: randomized controlled trial.
Torky H, et al. JBRA Assist Reprod. 2021. PMID: 33739797
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