【不妊治療】胚培養士への質問回答まとめ 治療方針編

質問の紹介と回答
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本ページでは不妊治療患者様からTwitter上で頂いたご質問とそれに対する胚培養士の回答をご紹介します(一部改変しています)
あくまでも、胚培養士の1意見としてご参考ください。実際の治療の際には、患者様の背景などにより異なりますので主治医の診断に従ってください。

凍結融解後の「胚の収縮」の影響は?

 

質問者さん
質問者さん

今月、凍結初期胚を移植することになりました。

移植前の説明で、「融解後の回復が遅く収縮していました」との説明を受けました。回復の戻りが遅く収縮していた場合でも大丈夫でしょうか?

ぶらす室長
ぶらす室長

胚を凍結する際にそのまま冷やすと、細胞の中の水分が氷の結晶となります。この氷の結晶ができると細胞がズタズタになって死んでしまいます。そこで、凍結する前に卵の細胞の中の水分を一度脱水して、結晶化しない液体と入れ替えます。いわゆる凍結液です。この入れ替えた液体はそのまま残っているととても有害なので、溶かす際に再び脱水して細胞の中の凍結液を抜き、無害な培養液に置換して回復させます。

そのため、凍結融解操作で胚は「収縮」と「回復」を何度か繰り返すことになります。

 

同一のステージやグレードの胚であれば、融解後の回復が早い胚の方が妊娠率は高い傾向にあります。また、回復を確認できないまま(収縮したまま)移植すると妊娠率は低下します。

この融解後に収縮して回復しない原因はよくわかっていませんが、凍結融解操作によるものか、胚の質によるものかどちらの可能性も考えられます。

収縮した状態で移植しても妊娠する胚もあるため、変性(細胞が死んでしまっている)している胚でなければ移植すべきでしょう。

体外受精から顕微授精にすると染色体異常を改善するか?

 

質問者さん
質問者さん

体外受精ふりかけ法で胚盤胞まで発育させて、3個の良好胚盤胞をPGT-Aしましたが、40代のためか全て染色体異常胚でした。顕微授精に変更したら成績が変わる可能性はありますか?また何か他にできることはありますか?

ぶらす室長
ぶらす室長

一般的には、体外受精の方が顕微受精と比べて発育が良いとされていますが、顕微授精にしたことで胚の染色体異常が改善するというエビデンスはありません。

一方で、受精率に関しては顕微受精の方が高いとされていますので、受精卵を増やして頭数を増やすという意味では顕微授精を考慮しても良いかもしれません。

また、反復不成功が続く場合は、IMSIも考慮しても良いと思います。

しかしながら、40代の染色体異常率は70%以上と言われており、どうしても数うち当たる的な治療になってしまうのが現状です。

つきなみですが、生活習慣の改善は卵子の質の向上につながります。また、貴重な正常胚が得られた時に少しでも妊娠や妊娠継続ができるように、子宮鏡や子宮内膜炎などの検査を予めしておく事も良いかもしれません。

胚盤胞まで育たないということは初期胚移植は意味がない?

 

質問者さん
質問者さん

ふりかけ法で8個中8個受精し、2つは3日目の初期胚凍結、残りの6個は胚盤胞まで目指しましたが、全て途中で発育停止してしまいました。今月、グレード1の凍結初期胚を戻しましたが、着床せず陰性でした。胚盤胞まで育たないということは、初期胚を戻しても妊娠には至らないのでしょうか?慢性子宮内膜治療済み、内膜ポリープも切除済みです。

ぶらす室長
ぶらす室長

初期胚移植が良いか、胚盤胞移植が良いかは長い間議論されています。 ご存知かと思いますが、移植あたりの妊娠率は胚盤胞移植の方が高いと言われています。

この理由は、「胚盤胞に発育できたということ」自体が胚の選別になっているからだと言われています。 この理論で考えると、体外培養で胚盤胞へ発育できなかった胚は初期胚の段階で移植しても妊娠しなかったということになります。おそらく、この考え方概ね正しいと思います。

 

しかし、このことは「体外培養だから胚盤胞へ発育できなかった胚は存在しない」ことの証明にはなっていません。つまり、初期胚で移植することで体内で胚盤胞まで発育することができ、妊娠に至る胚は存在する可能性はあります。

また、累積妊娠率に関しては、初期胚移植も胚盤胞移植も差はないという報告もあります。

患者様のご年齢などにもよりますが、採卵個数が多い採卵を2回以上行っても1個も胚盤胞へ発育できない場合は、体外培養環境が合っていない可能性も考えられますので、初期胚移植をメインに考えてみても良いかもしれません。

 

40代で体外受精による治療を行う価値はあるか?

質問者さん
質問者さん

もうすぐ44歳でタイミング療法1年経過しても妊娠に至らず、体外受精を勧められています。

自然妊娠より体外受精の方が確率は高いそうですが、このくらいの年齢で体外受精はする価値があるのでしょうか?年齢的には、体外受精も厳しそうなので迷っています。

ぶらす室長
ぶらす室長

大変難しい質問ですが、44歳で妊娠出産される方はいらっしゃいます。ただ難しい、厳しいことは覚悟して頂ければと思います。

日本産科婦人科学会が公開している2018の不妊治療のデータブックをご参照ください。

2018年に44歳で不妊治療をした周期は日本全国で約2万周期ほどでした。一方で、妊娠率は5%、出産率は2%とかなり低率です。

可能性はありますが、厳しい戦いになることは否めません。

私からのアドバイスとしては、ご夫婦で相談して何歳まで続けるかを最初に決めておくことが大事かなと思います。

 

ぶらす室長
ぶらす室長

たくさんのご質問ありがとうございました。ご参考になれば幸いです。無事に妊娠出産に至ることをお祈りしています。

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